Column第3回「自分たちらしい曲選び」を貫いたカーペンターズ ▶︎▶︎▶︎
リチャード・カーペンターという言葉で検索をかけると、「アメリカの作曲家・編曲家・ピアニスト」と紹介されています。
では、カーペンターズとして活動していた頃の肩書きは何なのでしょう。
カーペンターズが放った全米TOP40ヒット20曲のうち、リチャードの自作曲はわずか5曲(「トップ・オブ・ザ・ワールド」「イエスタデイ・ワンス・モア」「オンリー・イエスタデイ」「愛にさよならを」「青春の輝き(アルバート・ハモンドとの共作)」)です。
一躍スターダムにのし上がった「遥かなる影」はバート・バカラック、 一発屋でなく真のスターの座をもたらした「愛のプレリュード」やこれからの季節にピッタリな「雨の日と月曜日は」等はロジャー・ニコルスとポール・ウィリアムスのコンビ、 日本で最初に大ヒットした「スーパースター」はレオン・ラッセル、などなど。
曲を選ぶきっかけもさまざまで、リチャードがカレンにピッタリだと思ったものを次々に拾い上げて納得行くまで仕上げたものがヒットする、の繰り返し。
誰が書いた曲が一番カーペンターズらしいか、についての結論は出ないでしょう。
ヒット曲の共通点を何とか見出すべくリチャードが手掛けたアレンジに注目すると、 ベースとドラムの音はヘヴィで、譜割りいっぱいに伸ばして土台を固めているものが多いようです(初期のレコーディングに参加していた名スタジオミュージシャン、ジョー・オズボーンとハル・ブレインの「手くせ」も大いに感じられます)。
対していわゆる「上もの」は、リチャードが弾くキーボードを中心にギターや管弦楽器が絡み、強弱長短を巧みに使い分けています。
それは異色のヒットである「星空に愛を(Calling Ocucpants Of Interplanetary Craft)」でも貫かれています。
そして歌は、カレンとリチャード2人の”作り込まない”地声を中心に多重録音したもの。
これらを幾重にも織り重ねて「カーペンターズらしい」曲が出来上がっています。
リチャードはそれでもバランスや音色に納得がいかない曲について、後年何度もリミックスを施して発表しています。
これが現在の肩書きでしょうか。
そのこだわりのきっかけや核心には、どんなに一生懸命演奏を重ねても迫れそうにありません。
誰が書いた曲であっても、リチャードが「カーペンターズらしい」と直感して細やかに紡ぎ織ったアレンジが施され、カレンが唯一無二の歌声を乗せると、聴く人の心の飾り気を取り払い、優しさともの悲しさが溢れるカーペンターズの世界が拡がります。
リチャードは、カーペンターズの世界をプロデュースする音づくりを念じながらアレンジに取り組んでいたのではないでしょうか。
たまには改まって、そんなこだわりの音にじっくりと聴き入ってみると、違う世界が拡がるかもしれませんね。
雨の季節にも、晴れた日にも・・・