Column第2回 「カーペンターズとクリスマス」▶▶▶
キリスト教圏のアーティストの皆さんは、ある程度のステイタスを得るとクリスマスソングをレコーディングするのがならわしのようです。
彼らのこの日への思い入れは、日本人には到底たどり着けないくらい深くて尊いものなのでしょうね。
カーペンターズが最初にレコーディングしたクリスマスソングが1970年の「Merry Christmas Darling」。
愛する人への感謝をちょっと華やいだ雰囲気の日常に込めたこの曲には、凛としていながらいつも温かさが流れるカーペンターズらしさがギュッと詰まっています。 そしてカレンの歌声がひときわ楽しそうに聴こえる最初のクリスマスアルバム『Christmas Portrait』(1978年発売)。
スタンダードナンバーが多数収録され、リチャードのアレンジャーとしての才能が結実している一方で、普通に生きる人々の日常を切り取った親しみやすい雰囲気は損なわれていません。 激動の日々を経て録り直された「Merry Christmas Darling」は、シングル盤より少しゴージャスな仕上がりです。
数少ないグノー版の「Ave Maria」も入魂の名唱で必聴です。 長年売れ続けた本作はプラチナアルバムに認定され、もはやこのアルバム自体がスタンダードとなっています。
さらにカレンの没後にリリースされた『An Old-Fashioned Christmas』(1984年発売)。荘厳な世界観がグッと強まる仕上がりの中、タイトルチューンの「An Old-Fashioned Christmas」ではこれまでになく温かさたっぷりのリチャードの歌声が実に心地良いです。
「Little Alter Boy」では、普通に歌うだけで絶望の中に光を見出すようなカレンの底知れぬ才能が感じられます。取り上げられたスタンダード曲の数々でもその歌声には説得力が満ち溢れていて、もっとこんな作品を残して欲しかった…という気持ちをどうしても抑えられなくなります。
1976~78年にはクリスマス時期に合わせて3本のテレビスペシャルも制作されました。ツンデレなリチャードとお茶目なカレンは、雰囲気だけでも絶妙なハーモニーを奏でています。
私たちもそんな作品の数々に刺激を受けながら、クリスマスライブの会場で、皆さんへの感謝を込めてちょっと華やいだ世界をお届けしようと頑張っています。