Column第1回 ▶▶▶
第1回『カーペンターズは「甘い」だけじゃない!』
シンプルなようで非常に複雑なサウンドを創り出す兄・リチャードと、
温かい中にもの悲しさも含んだ独特の響きで歌う妹・カレンの力が合わさり
魔法になって、決して音楽通ではない「普通に生きる人々」の心を捕えました。
それがカーペンターズです。
その魅力は瞬く間に全世界に拡がり、日本でも熱狂的に迎えられました。
苗字をそのままアーティスト名にする素朴だった兄妹は、甘く優しい美しさが
根底に流れるヒット曲を生み出し続ける中で、
「ママのアップルパイを食べてミルクを飲む」など、いわゆる当時の最先端で
尖っている各層からつまらない優等生的存在としてのレッテルを貼られました。
確かに「聴いたら不良になるからダメ!」と親に怒られる要素はほとんどありません
し、
1973年にはホワイトハウスで当時のニクソン大統領主催のパーティーで演奏を披露
したのですからまあ、優等生的な面はあったのでしょう。
しかし2人はそんな論評に媚びず、奇をてらうことも決してせずに自らの音楽性を信
じ、
より多くの「普通に生きる人々」に訴えかけるサウンドと歌を作る道を歩み続けまし
た。
ただ優しいだけではなく、強い信念を持って生きる人たちだったのでしょう。
「アルバム内でバラードを2曲続けてはいけない」というポピュラー音楽制作上の
不文律を破り、
ツアーで多忙を極めて新曲が作れない事を逆手に取ってオールディーズメドレーで
アルバムのB面を埋め尽くし…
そんな信念の積み重ねがカーペンターズ・サウンドを独自の高みに押し上げました。
特にリチャードは、むしろ大変な負けず嫌いでそんな酷評を投げかける連中を
あざ笑っていたのかもしれません。
その信念がデビューから45年・カレンの死後31年経った今でもカーペンターズの
音楽を不世出の存在として輝かせ、ファンを増やし続ける原動力になっているように
思えます。